パラドックス定数の演劇配信は私に生きる希望を与えてくれた

 

はとさん(@810ibara )主催の2020年#ぽっぽアドベントで空き日程がでたとのことで滑り込みで参加をさせていただきました、TuneMidoriと申します。宜しくお願いいたします。

 

変わった/変わらなかったこと Advent Calendar 2020 - Adventar

変わった/変わらなかったこと2 Advent Calendar 2020 - Adventar

変わった/変わらなかったこと3 Advent Calendar 2020 - Adventar

 

テーマは「変わった/変わらなかったこと」ということで、本当にもういろいろなことが変わった年でありましたが、今年いろいろあった中で最も熱狂し生きるのが楽しくて楽しくて仕方なくなったこと、それがパラドックス定数の演劇配信でありましたので、そのことについて描かせていただきたいと思います。


私は今現在地方に住んでいて、昨年までは、いや今年の1月くらいまでは展覧会やイベントに行くことをとても楽しみにしながら日々の労働に従事していました。生きる原動力にするくらいに大切なことだったのです。しかし新型コロナウイルスの流行によって自身の職場・職種により遠方に行くことは夢のまた夢のような状況になってしまいました。どこにも行けない、友達にも会えない、小旅行にも行けない……

そのような状況下で私を苦しみから救ってくれたのは、演劇の配信サービスでした。

 

10月中旬から11月末にかけて、パラドックス定数という劇団はYOUTUBEで過去の7作品の無料配信を行っていました。Twitterでファンの方々が紹介してくださっているツイートやイラストなどを拝見し興味を持ち、1作品づつ週末にアップロードされる作品たちを見て、激ハマりしたのです。その後演劇配信サイトのテアトルプラトーで有料で配信されている5作品も見て底なしの沼へと落ちていきました。素晴らしすぎる。やばい。

 

配信で視聴した12作品を個人的に図に配置するとこんな感じです。ちなみにこれはパラドックス定数をTwitterで布教して下さっている素晴らしい先人方がされていたものを自分もやってみたかったやつです。

f:id:TuneMidori:20201221220154j:image

黄色でアンダーラインを引いた作品がYOUTUBEで期間限定無料配信されていた7作品、緑色でアンダーラインを引いた作品がテアトルプラトーで現在も有料配信されている5作品です。 

 

私は物語における人物と人物のつながりの描き方として、相手が自分を理解してくれると期待して裏切られる話がとても好きです。他人とは理解できないものであり、相手を理解したつもりでもそこに見ているのは自分の願望、自身の投影、自己解釈の押し付けでしかないのではないか。そう考えているからかもしれません。


同じものを見ているはずだったのに本当は全然違うものを見ている。理解していたはずの相手の姿は自分自身の理想と願望を押し付けた偶像をみているに過ぎなかった。そういう話が好きで、パラドックス定数の作品たちはモロにその好みにぶっ刺さったのです。

 

以下は作品についての感想を書かせて頂きます。パラドックス定数、めっちゃ良いんです…めっちゃいいんですよ…

 

※ちなみにパラドックス定数の作品は実在の事件・人物を下敷きにした作品が多いのですが、あくまでフィクションとして描かれているということはご留意いただいた方が良いかと思います。※

 

まずはYOUTUBEで配信されていた「オーソドックス公演」の7作品について!

今これらの作品は視聴することはできませんが、なんと台本の通販を今行っておられます!ご興味ある方はぜひ!

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最初はやっぱり一番好きな「トロンプ・ルイユ」!!!最高の作品!開始してすぐ音楽にのせて動きだけで演劇のしくみを見せるところ、序盤15分間でこの演劇の魅力を存分に放ち心を奪いにくるところ、人と馬、青年と予想屋、馬主、調教師、調教助手、厩務員、ロンミアダイム、ウィンザーレディ、カミカゼバンチョー、アイゼンレイゲン、ミヤコヤエザクラ、ドンカバージョ……みんなひとつひとつドラマがあり、人生にかける思いがある。心を通わせるということは、もしかするとそうすることができたと錯覚しているだけかもしれない。けれどそう思うことで前に進める力をもらえることもあるのではないか、それは悪いものではないのではないか…そんな事を思いました。最高です。大好きです。今回見た12作品の中で最も好きな作品です。


「ブロウクン・コンソート」は登場人物の情と執着と欲望がぶつかりあう様が根深く身に刺さってしまい、今でも登場人物について思いを馳せない日はないほどです。宗谷兄弟と抜海さんについて考えています。そして新潟旅行。新潟旅行のこと考えないひといます?本当にもうすごくすごく面白かった。笑えるところあり、凄惨なところあり…おもしろいなぁと思いながら、登場人物の末路や語られない過去や物語の行間を見たいなぁ……本当に見たいなぁと欲求が湧く物語でした。


「731」は戦争で倫理の向こう側へ行ってしまった医者達の物語です。罪を犯したとしても生き延びたい人達。いやあれは本当に罪であったのか?罪とは?探究心のままに追求しただけなのに?そんな感覚が引き起こした凄惨で残酷な事実。倫理を逸脱した人達が紡ぐ物語は「蛇と天秤」も同様かもしれません。愚かで滑稽な人間の姿を見ることができます。

 

「Das Orchester」は実際にあった出来事をもとに作られたお話です。音楽を愛すること、大切なものを守ること、それを脅かすもの。貫くような叫びが心に響く作品でした。


「5seconds」は2人芝居。何のために他人を理解しようとするのか、他人の理解を拒むのは、そして許すのはなぜか。まったく心が通っていない二人がだんだん同じ時間をすごすことで通じ合っていく、ように見える…?ところのぎりぎりのラインをよぎっていくあたり。たまらない。ディスコミュニケーションとコミュニケーションの境を限界まで削って純粋な塊にしているような、そういった作品だと感じました。


「Nf3Nf6」は「5seconds」と同様に二人芝居。これは他の物語の中で肝になる男と男の執着とあらゆる情の関係を取り出してそれのみで構成されているような作品です。ハーゲンダッツの果肉部分のみでアイスのカップが埋め尽くされているような、最初から最後まで全部それだけで構成されている恐るべき作品。他人に理想を見ること、他人に理解されたいと思うこと、理解してくれる人間がいるという喜び…おそらく人により様々な感想を抱くことになる作品だと思います。

 

上記7作品のYOUTUBEでの無料配信を何度も何度も見返し、そして配信期間が終わってしまってへこんでいた時にテアトルプラトーという演劇配信サイトで有料配信されているパラドックス定数の作品の存在を知りました。こちらで有料配信されている作品はYOUTUBEで配信されていたオーソドックス公演よりももっと特徴的で荒ぶるような熱量、尖った作品を見ることができます。次はその5作品についての感想にいきます。

【テアトルプラトー】 演劇番組・演劇映像コンテンツを配給・配信 (t-px.com)

ちなみにテアトルプラトーのサイトはこちらです!!みんな見て!!!!


東京裁判」は知的な男たちが知と誇りと感情を持って立ち向かう姿がとてもかっこよく、物語の厚みや力強さを感じました。知と感情を両立させている設定も面白かった。私にもっと東京裁判への知識があればもっとこう深くこの作品の素晴らしさをお伝えできるのにすみません…でもこれ本当すごいんです、熱と知が塊となってぶつかってくるめっちゃかっこいい作品なんです!!!是非観て下さい。本当に凄くて本当にかっこいいから…!


「インテレクチュアル・マスターベーション」では知識人の目線で世の中を見て変えようとする男たちの軽妙なセリフの洪水と、知的遊戯でしかないのではないかということをツッコんでくる話の流れが好きでした。遊戯ではなく行動で示した者達の行き先は……これは本当に台詞が良くて良くて、夢みたいに楽しかったです。こんな楽しく言葉が踊って走って弾ける演劇たまんないですね!最高!!!


「五人の執事」は、これはもう見ていただいてという他ありません。物語は他の作品と違い不思議な雰囲気で進んでいき、冒頭などは奇妙に安らかな音楽が流れ登場人物が動いているだけで台詞を発さないまま進みます。館の中でミステリーが発生し、それを謎解きしていくことによって見えてくるもの、ウツギの花……最後まで見終わった後、もう一度、そして何度でも物語を見返したくなる不思議な魅力を持つ作品です。

 

三億円事件」はモノの考え方も立場も違う男たちが反目しぶつかり合いながらも協力していく姿が熱い。しかしただ熱いだけの物語ではない、というところにこの作品の肝があります。これはもう見ていただいたほうがいい…見て…頼む…めちゃめちゃいいから…面白いから見て…面白いし関係性も熱いし物語もしっかりしているし面白いから見て…


そして「怪人21面相」……これは……これはですね……激ヤバのヤバいやつです。ちなみにこれは絶対に「三億円事件」の後に観て下さい。

この作品はグリコ森永事件の犯人となる4人組の物語です。まったく交わることないんじゃないかというほど毛色の違う4人の男たちが集まり、それぞれがこの犯罪に手を染めることになる動機が一つ一つ開示されていくたびに震えます。

面白くて興味深い……でもこの物語はそういう点だけではなく、非常にぶっ飛んでいる点があるんです。それは男と男の関係性です。異常にぶっ飛んでいるんですこの物語は。最高にぶっ飛んでいる。

 

先ほど挙げたパラドックス定数の物語にも非常に濃く独特な関係性を持つ男たちが出てきます。「Nf3Nf6」「ブロウクン・コンソート」などは特にそういう傾向がありますが、それ以外の物語でも非常に重要なファクターとして存在している。

 

でもその中でも「怪人21面相」は断トツにやばい。断トツですよ断トツ。もうすべてがやばい。なんなんだこの男たちは、どうした、正気なのか、この物語は正気なのか、男と男の間の、言語化するにはどのような言葉がふさわしいのかがわからないほどの感情、執着、執念、妄執、それがてんこ盛りだ。物語という外壁や屋根や骨組みで作られたお城の中、奥深くにある感情の泉こそが本質という気持ち。感情の泉を公園において噴水のように誂えるのではなく、過程の煉瓦を積んで城を築きドロドロの情の泉を最奥の部屋に据えて、ゆっくりと丁寧に招き入れてくる。そしてもうその部屋は大変なことになっている。地獄だ、悲しい地獄だ。正気の沙汰ではない。

 

こんな禍々しい闇の底のような物語を素晴らしい個性と演技力を持つ役者達が演じ切っている。そんなものがこの世にあるの!?知らなかった…こんなに素晴らしいものがあるなんて!!

本当に本当にありがとうございます…本当にありがとうございました…

 

これらパラドックス定数さんの作品を楽しく見させていただいた2~3か月、マジでマジで楽しかったです。毎日生きる気力が湧いた。今もめちゃめちゃ湧いています。この世にはこんな最高の物語を書いて演じる最高の劇団があるのだということを知ることができてよかった。本当に最高。生の舞台も見たい!「プライベート・ジョーク」という作品の公演を今年12月に行われていて、本当に本当に行きたかったけれどどうしてもどうしても行くことができなかった、この思いを絶対にいつかコロナ禍が過ぎたら晴らしてやるのだと思って日々労働に従事しています。絶対に生の舞台を見るのだ!!!!絶対に!!!それまでは絶対に生き延びてやる!!!!

 

以上です!書かせていただきありがとうございました。

次へのバトンとして再度アドベントカレンダーのリンクを掲載させていただきます。

どの記事も本当に最高。素晴らしい企画に参加させていただき本当にありがとうございました!

 

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